脂漏性皮膚炎と整菌スキンケア

　私たちの顔には、数多くの皮膚常在菌がいます。誰でも皮膚表面や毛穴の中に約20種類、数百億個の常在菌が生息しています。

　また、その常在菌は、「善玉菌」、「日和見菌」、「悪玉菌」に分類することができます。

　善玉菌は、皮膚に潤いを与え、乾燥を防ぐことで外部の刺激から守る働きがあります。主なものは、表皮ブドウ球菌です。

　日和見菌は、普段は善玉菌の働きをしていますが、バランスが崩れると悪玉菌の働きをします。主なものは、アクネ菌で、バランスが崩れると毛穴の中で増殖して、ニキビの原因となります。

　悪玉菌は、肌トラブルを引き起こす働きがあります。主なものは、黄色ブドウ球菌はアトピーの原因となり、マラセチア菌は脂漏性皮膚病の原因になります。ただ、これらの菌は健康な肌の方にもいる菌で、何らかのきっかけで異常繁殖した場合に限ってその原因となるものです。

　整菌スキンケアという言葉を聞かれたことのある方もいらっしゃると思います。善玉菌は残して育成し、悪玉菌だけ洗い流すということらしいです。

　しかし、そんな都合のいい洗顔料や化粧品の商品はこの世に存在しません。一部の商品では、善玉菌活性因子配合と謳っていますが、そういう因子は発見すらされていません。

　その商品の有効成分を見てみると、グリチルリチン酸ジカリウムとなっています。これは、抗炎症、抗アレルギー作用はありますが、善玉菌だけを生かすわけではありません。

　広告では整菌作用をしきりに謳っていますが、それと有効成分が一致しません。この商品は、消炎効果が少しはあるかなということで医薬部外品になっていると思われます。

　結論として、整菌スキンケアというのは不可能です。石鹸で洗えば、善玉菌も悪玉菌も落とされてしまい、また、何時間か経つと自然に増えていくものです。

　しかし、この整菌スキンケアで脂漏性皮膚炎が治ったという方もいらっしゃいます。僕は、それはたまたまだと思っています。

というのも、脂漏性皮膚炎は、

①皮膚の炎症を抑える。
②異常に繁殖したマラセチア菌を殺す。
③保湿することで皮脂の過剰分泌を抑える。
④体質改善を行う。

を行わないと治りませんが、整菌スキンケアに含まれているグリチルリチン酸ジカリウムでは、①しか対応できません。

　しかも、炎症（赤み）を抑える効果は、医薬品であるステロイドやプロトピック、あるいは非ステロイド系の消炎薬に遠く及ばないからです。